先日のレッスンでのこと。
Iちゃんは楽譜をしっかり見ながら、
とても集中して演奏してくれました。

音符はほぼ正しく弾けていました。
でも、その日は合格にしませんでした。
理由はひとつ——
フレーズが意識できていなかったから。
音楽にはフレーズ——
つまり「ひとかたまりの音の流れ」があります。
言葉で言えば、どこで区切るか、
どこまでが一息なのか。
それを無視して音符だけを追っていると、
言葉でたとえれば「読点のない文章」を
読むような演奏になってしまいます。
実は、私自身にも忘れられない経験があります。
子どものころ習っていた先生は、
大雑把に言えば「弾けていれば合格!」
というスタイルでした。
おかげで曲数だけはこなしてきました。
ところが高校になり、
志望大学の先生に初めてレッスンを受けたとき、
言われた言葉は衝撃的なものでした
「基本からやり直しましょう」。
十数年間積み上げてきたものが、
一瞬で全部否定された瞬間でした。
その後のIちゃん。
次のレッスンでは、フレーズを意識した
演奏ができるようになっていました。
合格!そして、次の曲へと進みました。
一度ちゃんと身につけた感覚は、
その先ずっと演奏の土台になります。
焦らず、でも妥協せず。
それが遠回りに見えて、
いちばんの近道だと信じています。
あのときの悔しさと虚しさが、
今の私のレッスンの根っこにあります。
だから私は、演奏に必要な要素が
きちんと身についていないと、
たとえ音符が正しく弾けていても合格にしません。
時には厳しいと感じるレッスンになることもあります。
でも、それは「後でやり直す苦労」から
生徒さんを守るためでもあるのです。
